札幌高等裁判所 昭和38年(く)1号 決定 1963年6月05日
少年 K(昭二二・五・一六生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告理由は抗告人提出の抗告申立書記載のとおりであつて、その要旨は原決定はその処分が著しく不当である。
抗告人は強姦事件を起して少年院に送られたことはあたりまえと思うが、未だ一五歳であるから、中等少年院に送られるのが当然であり、特別少年院に入られたことは不服であると云うにある。
しかし、本件少年保護事件記録および少年調査記録を調査すると、少年の更生を図るには原決定書に詳細に記載されているとおりの理由で少年を再度少年院に収容し矯正教育を施すことが必要であると認められるところ、少年は昭和二二年五月一六日生であつて原決定当時には未だ満一六歳に達しておらず、他方特別少年院は少年院法第二条によれば犯罪的傾向の進んだおおむね一六歳以上の者を収容する為の施設として設けられていることに鑑み、少年を送致すべき少年院について考察すると、前記記録によつて認められる昭和三七年六月一一日初等少年院仮退院後再びてき屋仲間に入り、問題の生活を続けていな少年の心身の現況、仮退院後約六ヵ月以内に恐喝、監禁、強姦致傷というかなり犯罪的傾向のすすんだ非行を犯していること、少年鑑別所、家庭裁判所調査官による専門的調査の結果も一致して特別少年院への収容処分を必要とする意見であることなどを併せ考えると少年は原決定当時満一六歳に約二ヵ月余り未満ではあるが、強力な矯正教育を施すため特別少年院に送致することが必要と認められ、これと同趣旨に出でた原決定はまことに相当であつて、法令の違反乃至処分の著しい不当はない。
よつて少年法第三三条第一項少年審判規則第五〇条に則り主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 矢部孝 裁判官 中村義正 裁判官 萩原太郎)
参考一
抗告申立書
右の者に対する強姦保護事件について昭和三八年二月二六日特別少年院送致の旨決定の言渡を受けましたが左記の理由によって不服につき抗告を申立てます。
昭和三八年三月一日
抗告申立人 K
札幌高等裁判所御中
抗告の趣旨
一、僕は強姦事件を起して少年院に送られた事はあたりまえだと思います。しかし一五才で特別少年院に入られた事は不服でたまりません。
本当は中等少年院に送られるのが当全だと僕は思います。
参考二 鑑別結果通知書<省略>
参考三 少年調査票<省略>